上演履歴
旗揚げ公演 『光の群れ』(2017年8月25日~26日)
■あらすじ
“生きているって、いとおしい。”
田舎町の幼馴染三人組、つきひ・かすみ・けい。毎年、盆明けの夏祭りに一緒に行くことが、三人の大切な約束だった。しかしある年の祭りで、つきひは川に溺れ、一人他界してしまう。
それから一年後。再び夏が訪れた。町の墓地では迎え火が焚かれ、空高く上がった煙は、隔たれたあの世まで道を作る。かすみとけいが見澄ますなか、新盆を迎えたつきひが、初めてこの世に帰ってきた――。
そして、今年も夏祭りが始まる。
■出演
山野莉緒、青木真子、鈴木サル、てーよー、2かいどう紗月
朴美映、田邉美里、クロダヒロミツ(劇団白芸)、平島美樹(劇団個人主義)、松田さくら
鈴木みなと(劇団個人主義)、千脇尚之、三橋亮太
■会場
千葉市南部青少年センター
書ご挨拶(公演パンフレットに掲載)
はじめまして。劇団浅葱色主宰の山野莉緒です。
この夏の日に、この『光の群れ』という作品で旗揚げの公演ができることを、とても幸せに思います。本日は、お暑い中くださり、誠にありがとうございました。
夏は、草木も虫も子どもたちも、生き生きとして、たくさんの命が光り輝く季節です。だけどその中で、ふと地面に蝉を見つけたり、お墓参りを行ったり、そういうことがある季節です。楽しいのに、寂しくなってしまう季節です。
すべてを合わせて、私は、夏を、生命力のみなぎる季節だと感じます。
生きるということは、死に向かっていくということだから、死について考えるときこそ、私達は、力強く生きているのだと思うのです。
この劇が、皆様の「生きよう」という気持ちに響いたら、私にとって有頂天外の喜びです。お楽しみください。
そして、どうぞ良い夏をお過ごしください。
第2回公演 『コインランドリーの天使』(2017年12月27日~29日)
■あらすじ
売れない画家の青年・浅沼は、美術大学時代の教授・柳田と関係を持つことで、どうにかその日その日を暮らしていた。ある日、いつもの通り洗濯に訪れたコインランドリーで、背中に羽を生やした少女・れいと出会う。
「羽を洗ってるの」
れいを天使と疑いながら逢瀬を重ねるうち、浅沼の心には、“彼女を描きたい”という強い欲求が芽生えていった。
「いいけど、可愛く描いてね」
キャンバス越しに絡む、画家とモデルの視線。描かれた、小さな背中と大きな羽。この一枚の絵が、やがて浅沼の運命を変える。
ありし日の、君の背中に、羽を見た。
■出演
佐々木浩人、青木真子、鈴木サル、藤枝七香、2かいどう紗月、山野莉緒
■会場
サブテレニアン
■ご挨拶(公演パンフレットに掲載)
コインランドリーをお使いになったことはありますか。
私は、一人暮らしを始めたことで利用するようになりました。ひどく静かな空間ですね。一人きり、回る洗濯物を見ていると、落ち着いた気持ちにはなりますが、あれは心が凪いでいるというより、胸が冷えているのではないかと思います。
そうして過ごしているところへ、時々、誰かが現れることがあります。先客がいるか、後からやって来るか。いずれにしても、出会った初めは緊張します。しかし、この人も今日までこれらの服を着ながら、ごく近くで生活していたのだと思うと、私はやけに嬉しい気がして、多少張り詰めていても、この方がよほど穏やかだと感じるのです。
誰かといるときは、一人にさせてほしいと怒り、一人でいるときは、誰かにいてほしいと泣く。そんな我儘な自分と、それを決して汲み取ってはくれない他人とで、これからも日々は編まれていくでしょう。あなたと私が、この日、この場所で、こうして同じ空気を吸い、そしてすれ違っていくことも、お互いの人生にとりまして、かけがえのない一本の糸になることを願っています。
本日はご来場いただきありがとうございます。どうぞごゆっくりお楽しみください。
第3回公演 『憂色のテーブル』(2018年3月22日~24日)
■あらすじ
木下家は3人家族。料理上手な姉・杏佳と、食べ盛りの弟・麦人、そしてママ。
今夜もテーブルの上には、おいしそうな夕食がずらり!
お気に入りのドレッシングをかけたサラダ。大盛りのパスタ。よく煮込んだシチュー。
テーブルには、温かい料理も冷たい料理も、一緒に並んでいる。そのすべてを笑い合って食べるのが、きっと、家族だ。
■出演
秦さやか、2かいどう紗月、山野莉緒
■会場
カメアリ
■ご挨拶(公演パンフレットに掲載)
人間、生まれたからには、必ず家族がいるはずです。また、生まれたからには、必ず恋愛をするはずです。そうして、新しい家族を作っていきます。
人間がこの世に誕生してから数百万年。脈々と受け継がれてきたこのサイクルの中で、ふと、立ち止まってしまう人もいるのではないでしょうか。その肩には、大きな不安がのしかかることでしょう。今回の主人公は、そんな女の子です。
家族のあり方、恋人のあり方、人としてのあり方。それは本当に様々で、間違いはきっと一つもありません。みんな、ただ、好きな人とおいしいものを食べる時間を、できるだけ長く続けて、人生としたいだけ。あなたが幸せになれるなら、それが一番正しいと、私は思います。どうかあなたの人生に、うららかな春の日が続きますように。
本日は、ご来場いただき誠にありがとうございました。この作品を観たあなたが、ご家族に対して温かな気持ちを抱いてくださったら。つられてお腹を空かせてくださったら。そして、米津玄師を好きになってくださったら(笑)、嬉しいです。
第4回公演 『どうかこの花を受け取って』(2018年9月16日~18日)
■あらすじ
「やまとうたは、ひとのこころをたねとして、よろづのことのはとぞなれりける。(古今和歌集仮名序)」
言えないから、癒えない傷がある。嘘つきの胸には、やがて美しい花が咲く。
人気モデル清水志保が、突然の休業を発表。隠された理由を巡り、あらぬ記事を書きたてる週刊誌。鳴りをひそめたスキャンダル女王。甘い煙に夢を見るオカマ。相槌を待つカーラジオ。駆けずり回る青年。降り注ぐ光の群れ。
平成のど真ん中、二〇〇三年。夏の東京。人々は生きた。
あなたが愛した時間も、憎んだ時間も、どんな些細な一瞬でさえ、こうして時代となっていく。一五年前なんて、振り返るほど昔じゃない。あなたはまだこの夏を覚えている。いつか思い出せなくなっても、決してなかったことにはならない。
さよなら、平成の夏。
■出演
青木真子、山野莉緒、安藤奈央、クロダヒロミツ(劇団個人主義)、佐々木浩人(劇団個人主義)
■会場
サブテレニアン
■ご挨拶(公演パンフレットに掲載)
私は、思いを言葉にするのがあまり得意ではありません。昔は素直な子どもだったと思いますが、大人になる途中、言葉にしても伝わらない思いがあることを知りました。伝えても叶わない思いがあることを知りました。悲しくて、寂しくて、痛かった。傷つくことを恐れ、私は臆病になりました。脚本は、そんな私にとって、思いを表現する大切な手段でした。
でも、変わっていかなければ、抱えた傷も癒えないんですね。自分を大切にする人は、誰かのことも大切にする。すごく悲しんだ人は、すごく愛せる人になる。すごく傷ついた人は、すごく優しい人になる。そうやって、私は素敵な人になりたいです。
人は一人では生きられないから、誰かと生きなければなりません。一緒に息を吸って、一緒に吐いて、時にはそこに声を乗せて。今日も、私達と、この劇場で、一緒に息をしてくれて、ありがとうございました。これからも長く息を続けて、長生きしましょうね。